自転車利用者はご注意を

 平成27年6月1日に、改正道路交通法が施行されますが、今回のメインは何といっても自転車利用者に関する改正でしょう。
 私も自転車に乗りますが、仕事柄、特に道路交通法の定めを意識して運転しています。
 さて、今回の改正により、自転車利用者にどのような変化があるのか、まとめてみました。

 問題となる追加条文は道路交通法第108条の3の4です。
 自転車の運転に関し、道路における交通の危険を生じさせるおそれのある行為として政令に定められた危険行為をした者に対して警告がなされ、2回以上警告を受けた者に対して、自転車運転者講習が義務付けられます
 自転車運転者講習は5,700円(標準額)の手数料を支払う必要があり、3時間の講習となります。
 また、この自転車運転者講習を受講しなかった場合、5万円以下の罰金という刑罰を科されることになります(道路交通法第120条第1項第17号)。
 では、どのような行為が危険行為とされているかといいますと、政令で定められた行為は以下のとおりです。

⑴ 信号無視
⑵ 道路標識等により通行禁止とされている道路の通行
⑶ 歩行者用道路を通行する際の徐行義務違反
⑷ 通行区分(歩道と車道が別れている場合には車道、車道の左側通行等)違反
⑸ 路側帯を通行する際の歩行者の通行を妨げる速度・方法での通行
⑹ 踏切の遮断機が閉じようとし、もしくは閉じている間又は踏切の警報機が鳴っている間に踏切への立ち入り
⑺ 交差点における安全進行義務違反
 ① 信号機の設置されていない交差点を左方から走行してくる車両の進行を妨害しない義務
 ② 優先道路又は幅員の明らかに広い道路との交差点(信号機が設置されていない交差点)において、優先道路又は幅員の明らかに広い道路を通行する車両の進行を妨害しない義務
 ③ 優先道路又は幅員の明らかに広い道路との交差点(信号機が設置されていない交差点)に進入する際に徐行する義務
 ④ 交差点の進入・通行時の車両・歩行者に注意し、安全な速度と方法で進行する義務
⑻ 交差点右折時の直進車及び左折車の進行を妨害する行為
⑼ 環状交差点での安全運転義務
⑽ 信号機のない交差点又はその手前での道路標識等により一時停止する旨指定されている場合の停止線での一時停止義務違反
⑾ ①歩道通行時に歩道の中央から車道寄りを徐行して通行する義務又は②自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなる際の一時停止義務の違反
⑿ 適切なブレーキが装着されていない自転車の運転
⒀ 酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)での運転
⒁ ハンドル、ブレーキなどの操作、状況に応じた他人に危害を及ぼさないような速度と方法での運転義務(安全運転義務)の違反

 (禁止される行為の代表的なものを列挙したもので、全てを挙げたものではありません。)
 違反しがちな行為といえば、⑴ 信号無視、⑷ 通行区分違反、⑽ 一時停止違反、⒁ 安全運転義務違反でしょうか(⒀ 飲酒運転が許されないのは当たり前ですよね!!)。

 もちろん、これまでの道路交通法においても、⑴ 信号無視は許されない行為です。
 しかし、改正道路交通法について書くに当たり、自転車運転中に他の利用者を意識をしながら見ていたのですが、信号無視をしている人の多さに驚かされました。
 また、歩行者・自転車専用信号が設置されていない交差点においては、一般的な3色信号に従わなければなりません。
 3色信号は自動車専用の信号ではないので、気を付けてください。

 近時、自転車は歩道ではなく車道を通行しなければならない、という話をよく聞きます。
 確かに、自転車も車両ですので、車道を通行するのが原則です。
 しかし、大阪市内の大きな道に沿う多くの歩道は、道路標識や道路面への表示により自転車通行可とされています(事務所の前の歩道も、下のような標識があり、自転車が通行可能となっています)。
標識自転車通行可
 そのため、自転車で歩道を走行すること自体に問題がないことも多いのですが、歩道を通行する際には車道側を走行するように気を付けなければなりません。
 また、歩行者優先であることに変わりありませんので、徐行が原則であり、状況に応じて一時停止をしなければなりません。

 さらに、自動車を運転している際には、気を付けるという方が多いですが、あまり自転車で意識して停止している人を見かけることは少ない一時停止です。
 一時停止の標識や停止線の有無を意識して運転するようにしなければなりません。

 また、一般的・抽象的な⒁ 安全義務違反も危険行為として定められています。
 道路交通法第71条第5号の5、同条第6号のいう各都道府県公安委員会が定める規則(大阪であれば大阪府道路交通規則)の規定を参考にすると、

・傘をさしながらの運転、物を持つ等視野を妨げ又は安定を失うおそれのある状態での運転
・携帯電話(もちろんスマートフォンも)を手で保持して通話をしながら又は画面を見ながらの運転
・サイレンや警察官の指示が聞こえないような音量で音楽等を聞きながらの運転

は安全義務違反行為に該当することになります。
 また、携帯電話で通話しながらの運転や音楽等を聞きながらの運転が禁止されていることを考えると

・ハンズフリーのイヤホン等を用いての携帯電話で通話をしながらの運転

も安全義務違反行為に該当するおそれがあります。

 最後ですが、今回の改正は、これまでの道路交通法においても禁止されていた行為について、警告・安全講習の対象としたものです。
 上記の行為に限らず、自転車も道路交通法上の「車両」であることを再確認し、道路交通法の規定を学び、道路交通の安全に注意して運転しなければなりません。

 長くなりましたが、歩行者、自転車、二輪車、自動車いずれにもかかわらず、道路を利用する際には十分に注意してください。
 被害者・加害者いずれも多くのものを失ってしまいます。